一番の決め手は、自分の興味が日本文学、とりわけ古典文学にあり、この学科であればさらに多角的な視点から古典文学を読み解くことができると考えたからです。
もともと和歌や古文がとても好きだったので、もっと学びを深めたいと思っていました。しかし、高校までの授業では受験対策として古文を正確に読み解くことが第一に求められ、私自身「そもそも文学に正確性も何もないのでは」という考えを持っていたことから、高校まではあまり自分の好きなように古典文学を楽しむことができていませんでした。ですから、大学に入って、考えれば考えるほど解釈が深まる古典文学の世界に飛び込んでみたいと思いました。
今は、平安時代から鎌倉時代の古典文学を学びつつ、並行して和泉式部という女性歌人に焦点を当てて研究しています。
和泉式部を研究し始めたきっかけは、2年生の時にある講義で彼女の和歌を扱った際、そのセンスに心を打たれたからです。それまで私が、和歌に対して「雅な世界」を作り出す、あるいはそれを日常から見出すものと認識していたのに対し、彼女の歌には「俗物的なものを雅に昇華させている」と感じさせるものがあったのです。
和泉式部の研究に限らず古典文学を学んでいて面白いのは、昔の文化人に対する解像度が上がることです。意外と昔の人も現代の私たちと同じような悩みや不満を抱えていたことが分かり、親近感が湧く時もあります。彼らの作品や人生に触れることで、生きている時代が離れていても人としての距離が近づいていくことを感じられるのが、この学問の魅力の1つではないかと思います。
日本語?日本文学科ならでは、といえば、いくつかアイヌに関する講義があることでしょうか。最初にこれらの講義を見つけた時、私は胸が踊りました。というのも、北海道に住む者として、以前からアイヌのことを知っておきたいという気持ちがあったからです。そのような時にアイヌに関する講義があると知り、履修するしかないと思いました。
実際に履修してみると、アイヌに対する見方が一変しました。アイヌの人々と昔の和人たちとの交流やアイヌ語の仕組みを学んでいく中で、それまで私が持っていたアイヌに対するイメージがいかに偏ったものであったのかを知り、もっと正しく知っていく必要があると強く感じたのです。
私は、このように自分の考えがひっくり返される感覚が好きです。なかなかここまでアイヌについて深く学ぶことができる機会は少ないと思うので、貴重な経験ができていると感じています。
さまざまな知識をもって、文学作品への理解?考察を深められるようになってきたことが自分の成長だと思います。元々、日本文学や日本語に興味はあったものの知識は多くなかったので、正直入学したばかりの頃の講義は先生が何を仰っているのか理解しきれないこともありました。
ですが、講義や読書経験を経て知識を身に付けたことに加え、ゼミで文学作品の理解の深め方を学んだことにより、多角的な視点から作品を捉え、一つ一つの言葉にも敏感になることができるようになりました。以前の私では疑問に思わなかった些細なことが、今では興味深い疑問に見えてくるのです。
このように、自分の知識によってその作品に色が添えられ、さらに深みが生まれていく過程が非常に面白いです。この感覚を知ることができたことが、大学生活における一番の成長だと思っています。
私が思う日本語?日本文学科の魅力は二つあります。一つは、古典文学から現代文学まで幅広い日本の文学を学ぶことができるという点です。日本語?日本文学科には古代から現代にわたる幅広い講義が用意されており、さまざまな講義を履修することで自分の視野を広げることができます。広い視野を持つことによって時代を超えた繋がりを発見することがあり、その瞬間がとても面白いです。また、古代から現代までを通して見ることで普遍的な傾向や変遷の流れが分かるのも、非常に面白いと感じています。
二つ目は、ゼミが有意義であるということです。発表の準備を進める中で担当の先生と一対一で話す機会が増えるので、アドバイスをいただきながら自分の興味があることをより深く研究することができます。そして、発表の際に他のゼミ生から意見をもらうことによって、新たな気付きやさらに調べたいことが出てくることもあり、研究をしていく上でとても有意義な環境が整っていると感じています。
今後の目標は、古典文学をはじめ、もっと多くの文学作品を読むことです。講義の際に扱うのは作品の一部であることが多く、その全てを扱うことは多くありません。気になる作品もあるのですが、なかなか時間を作れず、まだ読めずにいるものも多くあります。せっかく藤女子大学には大きな図書館があるのだから、気になるものや研究に必要だと思ったものはなるべくたくさん読んでおきたいと思っています。今後は、そのための時間作りをしていきたいです。
また、さまざまな知識を得た今の自分であれば、もっと作品の面白さを理解して読める気がするのでとても楽しみです。多くの作品を読み、多くの知識を蓄えていきたい、というのが当面の目標であり、願望です。
大学には、自分の興味のままに学びを深めていける環境が整っています。ですから、貪欲に、色々なことに挑戦してみて欲しいです。最初は繋がりが全く見えてこなかったものが、ある時繋がって見えてくる瞬間は、格別な面白さがあります。ぜひ皆さんにもその感覚を経験していただけたらな、と思います。
(学年、掲載内容等は2023年11月取材当時)